うちの子も体重が成長曲線の下のラインを割ってしまいました。そのときは「ちゃんと飲めていないのか?」「病気が隠れているのでは?」と頭の中が心配でいっぱいになりました。でも小児科で相談してみると、「機嫌がよくて、排泄もしっかりあるなら大きな問題はありませんよ」と言われ、少し肩の力が抜けました。

今回の記事では、

  • 成長曲線とは何か
  • 外れた時に考えられる理由
  • 受信した方がいいサイン

などをまとめてみました。

同じように悩んでいるパパママの参考になれば嬉しいです。

1. まず確認 赤ちゃんの成長曲線からはずれるのは珍しくない

母子健康手帳を開き、わが子の身長や体重を成長曲線のグラフに点で記したとき。「あれ、うちの子、線からはみ出してる…」「もしかして、ちゃんと育っていないのかな?」と、急に胸がざわついたかもしれません。特に初めての育児では、他の子と比べてしまい、不安な気持ちになるのは当然のことです。

でも、まず一番にお伝えしたいのは、赤ちゃんの成長が成長曲線からはずれることは、決して珍しいことではないということです。多くの先輩ママ・パパが、あなたと同じようにドキッとした経験をしています。

成長曲線は、あくまでもたくさんの赤ちゃんの成長データを集計した「発育の目安」です。そもそも、この曲線は100人の赤ちゃんがいれば、標準的な3人目から97人目までが入る範囲(3〜97パーセンタイル)を示しています。つまり、統計上、100人中3〜4人の赤ちゃんはもともと曲線の外側で成長するのです。

また、赤ちゃんの成長ペースは一人ひとり違います。生まれたときの大きさ、パパやママの体格といった遺伝的な要因、母乳やミルクを飲む量、もともとの体質など、さまざまな要素が影響します。そのため、すべての赤ちゃんが曲線内にぴったりおさまるわけではないのです。

「成長曲線からはずれる」といっても、状況はさまざまです。まずは慌てずに、赤ちゃんの状況がどのケースに近いか、下の表で確認してみましょう。

よくあるケースの例考えられること(一例)まず確認したいポイント
生まれたときからずっと曲線の外側(上か下)で推移しているパパやママの体格からの遺伝、生まれ持った体質など赤ちゃん自身のペースで、曲線のカーブに沿うように成長しているか
途中から曲線の外側にはみ出してきた一時的にぐんと伸びる「成長スパート」の時期、哺乳量や離乳食の量の変化など赤ちゃんの機嫌や体調にいつもと違う様子はないか
身長は範囲内なのに体重だけが外れている(またはその逆)体格の個人差(ほっそりした子、がっちりした子など)身長と体重のバランスが極端に崩れていないか

このように、曲線からはずれていても、赤ちゃんが元気で機嫌よく過ごし、その子なりのペースで着実に成長していれば、過度に心配しすぎる必要はありません。大切なのは、曲線内にいるかどうかという点だけを見るのではなく、その子自身の成長のカーブを追っていくことです。

次の章からは、成長曲線の正しい見方の基本や、具体的なチェックポイントについて詳しく解説していきます。まずは冷静に赤ちゃんの様子を観察するための知識を身につけ、不安を解消していきましょう。

2. そもそも赤ちゃんの成長曲線とは?見方の基本を解説

赤ちゃんの成長曲線(身体発育曲線)は、厚生労働省が行った大規模な調査結果をもとに作られた、赤ちゃんの成長の目安を示すグラフです。多くの赤ちゃんの身長や体重のデータを集め、月齢ごとにどのくらいの範囲に分布しているかを示しています。母子健康手帳に掲載されており、赤ちゃんの健やかな発育を確認するための大切なツールの一つです。

ただし、これはあくまでも「目安」であり、すべての赤ちゃんがこの曲線にぴったり当てはまるわけではありません。成長には個人差があるため、曲線からはずれているからといって、すぐに心配する必要はないということをまず覚えておきましょう。

2.1 パーセンタイル曲線が示す意味

成長曲線は「パーセンタイル」という単位で表されています。これは、同じ性別・同じ月齢の赤ちゃんを100人集めて、身長や体重が小さい順に並べたときに、何番目になるかを示したものです。

例えば「10パーセンタイル」の線は、100人中10番目の赤ちゃんの成長ラインを意味します。母子健康手帳の成長曲線には複数の線が描かれており、それぞれの意味は以下のようになります。

パーセンタイル値意味(100人中、小さい方から数えた場合)
97パーセンタイル97番目(上位3%)
90パーセンタイル90番目(上位10%)
75パーセンタイル75番目
50パーセンタイル50番目(中央値)
25パーセンタイル25番目
10パーセンタイル10番目(下位10%)
3パーセンタイル3番目(下位3%)

ほとんどの赤ちゃん(全体の94%)は、3パーセンタイルから97パーセンタイルの線の間に描かれた帯(バンド)の中に入ります。この帯の中に入っていれば、ひとまず標準的な範囲で成長していると考えてよいでしょう。

2.2 母子健康手帳での確認方法

お手元の母子健康手帳を開き、「身体発育曲線」のページを見てみましょう。男の子用と女の子用でグラフが分かれています。確認方法は簡単です。

  1. 乳幼児健診や自宅で測定した日時(月齢)を横軸で探します。
  2. 測定した身長・体重の値を縦軸で探します。
  3. 横軸と縦軸が交差する点に印(・)をつけます。
  4. これまでに記録した点と線を結んで、お子さん自身の成長のカーブを作ります。

ここで大切なのは、1つの点が帯の中にあるかどうかだけでなく、記録した点をつないだ線が、もともと印刷されている曲線のカーブに沿って伸びているかどうかです。たとえ帯の下の方や上の方にあっても、その子なりにカーブに沿って順調に成長していれば、多くの場合心配はいりません。

3. 【ケース別】成長曲線からはずれたときのチェックポイント

赤ちゃんの成長曲線が標準の範囲からはずれていても、多くの場合、その子なりの個性やペースで成長しているだけです。しかし、心配な気持ちは当然のこと。まずは慌てずに、これから紹介するチェックポイントを参考に、赤ちゃんの様子を冷静に観察してみましょう。「上に大きい場合」と「下に小さい場合」に分けて解説します。

3.1 上に大きい場合 成長曲線を超えた赤ちゃんのチェックリスト

赤ちゃんが成長曲線を上にはみ出すほど大きいと、「太りすぎではないか」「何か問題があるのでは?」と心配になるかもしれません。でも、多くは元気で健康な証拠です。以下の点を確認してみましょう。

3.1.1 赤ちゃんの機嫌や元気さはどうか

まず一番に確認したいのは、赤ちゃんの機嫌と活気です。毎日ニコニコと機嫌よく過ごし、手足を元気にバタバタさせているようであれば、過度に心配する必要はほとんどありません。成長曲線はあくまで目安であり、赤ちゃんの全体的な健康状態を見ることが最も大切です。

3.1.2 身長と体重のバランスはとれているか

体重だけが急激に増えているのではなく、身長も同じように伸びているかを確認しましょう。母子健康手帳の成長曲線のグラフを見て、体重のカーブと身長のカーブが、だいたい同じような角度で右肩上がりに伸びていれば、バランスよく成長している証拠です。身長も体重もしっかり大きい「体格のいい子」と捉えることができます。

3.1.3 母乳やミルクは飲みすぎている様子はないか

授乳のたびに大量に吐き戻したり、お腹がパンパンに張って苦しそうにしたりしていないか観察しましょう。特にミルクの場合は、缶に記載されている目安量と比べて、極端に多く与えすぎていないかを確認してみてください。赤ちゃんが欲しがるだけあげるのが基本ですが、哺乳後にいつも苦しそうな様子が見られる場合は、一度に与える量を調整してみるのも一つの方法です。

3.1.4 パパやママの体格との関連

赤ちゃんの体格は、遺伝的な要因も大きく影響します。パパやママ自身が生まれたときに大きめだったり、現在、身長が高かったり大柄な体型だったりする場合、赤ちゃんも同じように大きめに成長する傾向があります。ご自身の母子健康手帳を確認してみるのも良いでしょう。遺伝的な背景が分かると、少し安心できるかもしれません。

3.2 下に小さい場合 成長曲線に届かない赤ちゃんのチェックリスト

赤ちゃんが成長曲線の下の範囲にいると、「栄養は足りている?」「どこか悪いの?」と不安になりますよね。でも、小柄な赤ちゃんでも、その子のペースでしっかり成長していれば問題ないことがほとんどです。以下のポイントをチェックしてみましょう。

3.2.1 赤ちゃんは元気に過ごしているか

大きい赤ちゃんと同様に、最も大切なのは機嫌や活気です。あやしたときに笑ったり、手足をよく動かしたり、周りのものに興味を示したりと、赤ちゃんが元気に過ごしている様子が見られれば、まずは安心です。顔色が悪くないか、ぐったりしていないかもあわせて確認しましょう。

3.2.2 体重は少しずつでも増えているか

成長曲線の帯の中に入っていなくても、赤ちゃんなりのペースで体重が増加し、成長曲線のカーブに沿って右肩上がりに伸びていれば、基本的には心配いりません。毎日のわずかな増減に一喜一憂せず、1週間単位など少し長いスパンで体重の推移を見守りましょう。ただし、体重が全く増えない、あるいは減ってしまう状態が続く場合は注意が必要です。

3.2.3 哺乳量や離乳食は足りているか

母乳育児の場合、赤ちゃんがどれくらい飲んでいるか分かりにくく、不安になることがあります。授乳後に赤ちゃんが満足そうにしていたり、落ち着いて眠ったりしていれば、足りているサインと考えてよいでしょう。また、離乳食が始まったばかりの時期は、食べむらもよくあります。1食ごとではなく、1日や数日のトータルで栄養が摂れているかを大まかに見てあげましょう。

3.2.4 おしっこやうんちの回数と状態

おしっこやうんちの回数と状態は、赤ちゃんがしっかり栄養や水分を摂れているかを知るための大切なバロメーターです。以下の表を目安に確認してみてください。

項目チェックポイントの目安
おしっこ1日に6回以上出ていて、色が薄い黄色であれば水分は足りているサインです。回数が極端に少なかったり、色が濃いオレンジ色だったりする場合は、水分不足の可能性があります。
うんち回数には個人差が大きいですが、母子手帳に記載されているような月齢に合った状態のうんちが定期的に出ていれば問題ありません。便秘や下痢が続いていないか、いつもと違う色や状態ではないかを確認しましょう。

これらのチェックリストを確認した上で、赤ちゃんの様子がいつもと変わらず元気であれば、多くは個性や成長のペースによるものと考えられます。焦らず、赤ちゃんの成長を温かく見守ってあげましょう。

4. なぜ赤ちゃんの成長は成長曲線からはずれるの?考えられる原因

赤ちゃんの成長曲線が標準的な範囲からはずれると、多くのパパやママは心配になるかもしれません。しかし、その原因は一つではなく、ほとんどの場合は過度な心配がいらないものです。ここでは、成長曲線からはずれる主な原因について解説します。赤ちゃんの様子と照らし合わせながら、冷静に原因を探ってみましょう。

4.1 心配のいらないことが多い体質や遺伝などの個人差

赤ちゃんの成長曲線からのはずれで最も多い原因は、病気ではない「個人差」です。赤ちゃんの成長は、生まれ持った体質や遺伝的要因に大きく影響されます。

例えば、パパやママがもともと小柄な体格であれば赤ちゃんも小さめに、大柄であれば大きめに成長する傾向があります。また、ミルクをたくさん飲む子、少しずつしか飲まない子、消化吸収のペースが早い子、ゆっくりな子など、赤ちゃんの体質は千差万別です。

生まれたときは小さくても後からぐんと追いつく「キャッチアップ成長」をする赤ちゃんもいれば、その逆のパターンもあります。成長は一直線に進むわけではなく、一人ひとりの個性的なペースで進んでいくことを覚えておきましょう。

4.2 母乳やミルクの量が影響しているケース

日々の栄養源である母乳やミルクの量が、体重の増減に直接影響していることもよくあります。これは、授乳の状況を見直すことで改善できる可能性があります。

母乳育児の場合、赤ちゃんが上手に吸えていなかったり、授乳間隔が空きすぎていたりすると、飲む量が足りずに体重の伸びが緩やかになることがあります。逆に、赤ちゃんが欲しがるだけ頻回に授乳していると、成長曲線の上の方で成長していくこともあります。

ミルクの場合も同様で、パッケージに記載された目安量よりも飲む量が少なければ体重は増えにくく、多ければ増えやすくなります。哺乳瓶の乳首が赤ちゃんの口に合っていないために、飲む量が少なくなっている可能性も考えられます。

4.3 離乳食の進み具合によるもの

生後5〜6ヶ月頃から離乳食が始まると、それも成長ペースに影響を与えます。栄養の中心が母乳やミルクから食事へと移行していくこの時期は、一時的に体重の増え方が変わることがあります。

離乳食をあまり食べたがらない、食べムラがあるといった場合は、体重の伸びが緩やかになることがあります。反対に、離乳食をよく食べる赤ちゃんは、これまで以上に体重が増えることも珍しくありません。離乳食の進み具合も、赤ちゃんの個性やペースに合わせて見守ることが大切です。

4.4 まれに病気が隠れている可能性も

ほとんどの場合は個人差や栄養によるものですが、ごくまれに何らかの病気が原因で成長曲線からはずれるケースもあります。ただし、その場合は体重の増減以外にも何らかのサインが見られることがほとんどです。

例えば、以下のような病気の可能性が考えられます。

  • 消化吸収の働きが悪い消化器系の病気
  • 体に負担がかかっている心臓や腎臓の病気
  • 成長に関わるホルモンの異常(甲状腺機能低下症など)

もし、体重が増えない・減ることに加えて、「元気がない」「顔色が悪い」「嘔吐や下痢を繰り返す」「呼吸が苦しそう」など、他に気になる症状がある場合は、自己判断せずに小児科医に相談しましょう。病気が原因の場合、早期の対応が重要になります。

5. こんなときは専門家へ相談を 小児科受診を検討する目安

赤ちゃんの成長曲線が標準の範囲からはずれていても、多くは個性や体質の範囲内です。しかし、中には注意深く様子を見るべきケースや、病気が隠れている可能性もゼロではありません。心配なときは一人で抱え込まず、専門家に相談することが大切です。ここでは、小児科などの受診を検討するべき目安について解説します。

5.1 急に成長曲線のカーブから大きくはずれたとき

これまで成長曲線のカーブに沿って順調に成長していたのに、急にカーブを横切るように上や下に大きくはずれた場合は、一度専門家に相談することをおすすめします。例えば、今までパーセンタイル曲線内の25%あたりを推移していたのに、急に3%を下回ったり、逆に97%を大きく超えたりするようなケースです。成長のペースが急に変化した背景に、何らかの原因が隠れている可能性があります。

5.2 体重が増えないまたは減ってしまうとき

赤ちゃんの体重測定は、健康状態を知るための大切なバロメーターです。特に、以下のような状況が見られる場合は注意が必要です。

  • 哺乳量や離乳食の量は足りているはずなのに、体重が長期間横ばいになっている
  • 一時的ではなく、継続して体重が減少している

生後3ヶ月頃までの赤ちゃんの体重が1日に20g未満しか増えない日が続く場合や、それ以降の月齢でも体重の増え方が極端に少ないと感じる場合は、かかりつけの小児科医に相談してみましょう。

5.3 元気がない、顔色が悪いなど他の症状があるとき

成長曲線の数値だけでなく、赤ちゃんの機嫌や体調全般をチェックすることが非常に重要です。たとえ体重や身長が曲線内にあっても、以下のような症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診してください。

チェック項目具体的な症状の例
機嫌・活気ぐったりしていて元気がない、あやしても笑わない、一日中泣き続けている
顔色・肌の色顔色が悪い(青白い、土気色)、肌や白目が黄色っぽい(黄疸)
哺乳・食事母乳やミルクを飲む力が弱い、頻繁に吐き戻す、食欲がまったくない
おしっこ・うんちおしっこの回数や量が極端に少ない、尿の色が濃い、便の色が白っぽい、血が混じる
呼吸の状態呼吸が速い、息苦しそうにしている、肩で息をしている

これらの症状は、何らかの病気のサインである可能性があります。成長曲線のことと合わせて、医師に詳しく伝えましょう。

5.4 どこに相談すればいい?小児科以外の相談窓口

「すぐに病院に行くべきか迷う」「ちょっとしたことを聞いてみたい」という場合、小児科以外にも頼れる相談先があります。不安な気持ちを軽くするためにも、積極的に活用しましょう。

5.4.1 乳幼児健診の機会を活用する

市区町村が実施する乳幼児健診は、医師や保健師、栄養士などの専門家に直接相談できる絶好の機会です。身体測定の結果をもとに、成長や発達に関する具体的なアドバイスをもらえます。日頃から気になっていることを母子健康手帳にメモしておき、健診の際に質問するとよいでしょう。

5.4.2 地域の保健センターの保健師に相談

お住まいの地域にある保健センター(保健福祉センター)では、保健師が育児に関する様々な相談に応じてくれます。電話相談のほか、予約をすれば個別相談や家庭訪問をしてもらえることもあります。「こんなことで相談していいのかな?」とためらうような些細な悩みでも、親身に話を聞いてくれる心強い存在です。

5.4.3 かかりつけの産婦人科や助産院

出産した産婦人科や、母乳育児の相談でお世話になっている助産院も、特に月齢の低い赤ちゃんの相談先として頼りになります。赤ちゃんの誕生から関わってくれている専門家なので、ママの体調も含めて総合的に相談しやすいでしょう。

6. まとめ

赤ちゃんの成長が成長曲線からはずれることは珍しくなく、その多くは遺伝や体質などの個人差によるものです。まずは慌てずに、赤ちゃんの機嫌は良いか、体重は少しずつでも増えているかなど、日々の様子をチェックリストに沿って確認しましょう。成長曲線はあくまでも目安の一つです。ただし、体重が急に減ったり、元気がないなど他の症状が見られたりする場合は、かかりつけの小児科や地域の保健センターなど専門家へ早めに相談することが大切です。